教育・研修に活用されるVRコンテンツとは?効果や導入事例、展望を紹介
2023年9月7日
VR(仮想現実)と通信技術の進化によって、学校や企業の教育・研修現場でVRコンテンツはより活用されるようになってきました。
近年のオンライン学習の一般化と、文部科学省による段階的な学習用デジタル教科書導入も追い風となっています。
多言語対応のコンテンツも多く、グローバルな人材育成にも有効であるほか、会社説明や案内、研修にも応用可能です。
時間や場所の制約なくさまざまな「体験」ができるため、実演が難しい内容の紹介や説明にも役立ちます。
本記事では、教育分野でのVR活用の効果や導入事例、今後の展望について紹介します。
教育・研修分野でのVR活用とは?
教育・研修分野でVRコンテンツを活用することによって、座学などの受動的な学習から能動的な学習を促しやすくなりました。
学校の授業や企業の研修では教師や指導者の話を聞くだけではなく、VRによってさまざまな「体験」をすることで能動的に考える力を養えます。
学校では知識を、企業の研修では知識や技術、会社のビジョンなどを共有することが可能です。
さらにVRコンテンツでは360度自由自在に映像を見渡せるため、参加者の興味を引きやすいでしょう。
複雑な作業も実技を行っているかのように動きを確認でき、現地に行きにくい場所や危険な状況も容易に再現可能です。
そのため、安全学習や研修でのシミュレーションに盛んに活用されています。
多言語対応をすることで、外国人の教育・研修や海外人材の育成にも役立ちます。
教育・研修分野でのVR活用の効果
教育分野にVRを導入することで、どのような効果が生まれるのか具体的に見ていきましょう。
多様な疑似体験による学習
VRの最大の特徴は「仮想空間で現実に近い体験ができること」です。
従来型の教育や研修では実践できないことを体験できるため、学びの幅が広がります。
オンライン講義や研修だけでなく、集合形式での講義や研修でも、VRコンテンツは盛んに活用されています。みんなで一緒に疑似体験することで、より受講者の記憶や印象に残る内容になります。
コロナ禍からの正常化により対面の講義・研修が増えつつありますが、VRコンテンツは引き続き積極的に活用されていくでしょう。
VR技術による疑似体験を通じた学びは、従来の講義形式に比べて記憶の定着につながるともいわれています。
例えば、学習させたい都市を仮想空間に再現することで、その場所へ行った「体験」を持ってもらえるため、風土をより深く理解しやすくなるといったことがあります。
遠隔授業・研修の実現
コロナ禍では、社会科見学のような課外授業や現地研修、会社説明会が実施できなくなっていた学校や企業がほとんどでしたが、VR技術を使うことによって、現地で撮影された映像を3Dで「体験」できるようになりました。
感染症などの影響を受けずに、さまざまな疑似体験による授業や研修ができるようになったことは、VRの大きなメリットです。
コロナ禍の影響は緩和されましたが、今後も安全かつ手軽に、臨場感のある内容を提供する方法として、VRは遠隔授業や研修において積極的に活用されていくものと考えられます。
モチベーションと学びの質の向上
座学中心の教育や研修は、生徒や受講者にとって受動的なものになりがちです。
しかし、自分で視点を動かすなど、自由に操作できるVRコンテンツならば、能動的かつ実践的に学べるでしょう。
写真や映像を見るよりも、自分がその空間にいるような没入感を得られます。
また、自分の視点が制限されないので、自主的に参加する「アクティブ・ラーニング」が可能です。
ゲーム感覚で楽しみながら学ぶことができて飽きを感じにくく、学習するモチベーションを維持しやすいため、授業や研修効果の向上につながるでしょう。
リスクの少ない教育・研修
安全管理上、学習や研修の際に危険やリスクを伴う事柄には触れられなかったり、そうした場所には立ち入れなかったりするケースがあります。
VRコンテンツは、現実世界では再現の難しい状況を仮想空間で再現できるため、リスクの少ない状態で疑似体験でき、学習効果を得やすい傾向にあります。
例えば、手術のシミュレーション、災害時の安全確保など、実践前の予行演習や実際に起こったときの行動学習としてVRコンテンツを活用する方法もあります。
地域や場所、時間を問わず何度でも学習
基本的に地域や時間、場所の制約なく参加できるため、学習の効率化にもつながります。
身体的な制約があって学校に行きづらい方や、遠方に住んでいる方も自宅から手軽に授業や研修に参加できます。
VR空間内での行動などをデータ化すれば実施内容を振り返れるほか、教育・研修内容をVRコンテンツ化することで何度でも見直せて、自分のペースで学習できる利点もあります。
また、バーチャル世界での実験はやり直しがきくことから、「失敗から学ぶ教育」もやりやすいでしょう。
新しい生活様式の定着によって、学校、企業、参加者のリモートに対する抵抗感がなくなりつつあります。
リモートでの教育・研修においてもVRコンテンツを利用すれば、参加者は通学や通勤の時間や費用を節約できます。
加えて、主催者は学校や会場の設営の手間やコストを削減できるというメリットもあります。
教育・研修分野でのVR活用事例
授業や企業の社員研修、医療現場でのトレーニングから学校案内まで、さまざまなシーンでVRコンテンツは活用されています。具体的な事例を見ていきましょう。
京都大学
大平印刷株式会社が制作。
360度パノラマビューによる京大キャンパスツアーを、留学生向けに英語版で制作しました。
追加コンテンツとして、新たにドローン映像を制作しています。
キャンパスの広さと緑の豊かさを表現するために、海外の大学のドローン映像を研究し、撮影と編集を工夫しています。
また、アクションカメラを使って、あらゆる角度からの映像を組み合わせて、迫力ある映像を実現。
多角的な角度からのキャンパス撮影によって、大学に興味を持つ国内外の学生が増えるでしょう。
少子化により、生徒不足に悩む学校も少なくありません。
多言語に対応した学校案内のVRコンテンツを作ることによって、グローバルな人材育成へとつながっていくでしょう。
KYOTO UNIVERSITY 360°Virtual Campus Tour|京都大学
学校法人角川ドワンゴ学園
通信制の学校法人角川ドワンゴ学園のN高等学校、およびS高等学校では、2021年春から学習にVR機器を併用するコースを開設しています。
バーチャル学習と映像学習を実施する「普通科」を選んだ生徒は、旧フェイスブック社のメタ社が提供する最新VR機器「Meta Quest 2」を貸与もしくは提供され、VRを組み込んだ授業を受けられます。
通信制の学校では、体験型の授業による効果を得づらいのが課題でした。
VR導入によって、仮想空間でリアルな体験が得られるようになったと言えるでしょう。
世界最先端のオンライン学習|学校法人角川ドワンゴ学園 N高等学校・S高等学校
セコム株式会社
警備会社のセコム株式会社は、VR研修を導入した警備業界初の企業です。
「煙が充満した空間での避難誘導」といった、危険な環境での業務の訓練をVRで行っています。
現実世界で危機的状況を作り出すのはコストがかかるうえに危険なため、十分な訓練が実現できずにいましたが、VRを導入したことで、危険を伴う状況を想定した研修がしやすくなりました。
警備業界初、VR技術を活用した研修プログラムを導入|セコム株式会社
全日本空輸株式会社(ANA)
客室乗務員訓練にVRを取り入れ、3DCGの仮想世界で再現した機内で、緊急事態の安全確認作業を体験するという研修方法をとっています。
緊急事態における対応方法について反復実習が容易になったため、業務手順を正確に理解してもらうのに役立っています。
ANA客室乗務員向け機内訓練にNEC開発のVRを活用|全日本空輸株式会社(ANA)
教育・研修分野でのVR活用における課題と展望
VR技術を用いた教育・研修の課題として、まず挙げられるのはコストの問題でしょう。
VRゴーグルといった周辺機器やソフト、パソコンやタブレットなどを人数分用意するため、初期費用がかなりかかります。
しかし技術の進歩などによって、機器やソフトの価格は下がりつつあります。
また、ハード面に関しては小・中・高校の場合、文部科学省が1人1台端末の環境整備を進めており、より活用されるようになることが予想されています。
紙の教科書とデジタル教科書の併用が進み、そこにVR技術も活用されることで、口頭の授業による知識だけではなく擬似体験も得られることから、授業を受ける側も見聞を広げやすくなるでしょう。
グローバル化が進むなか、研修においてもVR空間上へ多言語AIチャットボットなどを組み込むことで、外国の方にもその場で補足説明でき、習熟度の差が生じないようにサポートしやすくなります。
会社のビジョンなども共有しやすく、国内外問わず幅広い人材を育成できるようになるのではないでしょうか。
教育・研修分野でのVRにはさまざまな活用方法があり、双方の相性も良いので今後さらなる展開が期待できる分野と言えるでしょう。
教育・研修の目的に合ったVRコンテンツを活用しよう
教育・研修分野にVR技術を取り入れることで、現地に行かなければわからなかった事柄や危険で実演が難しい内容なども簡単に仮想空間で再現でき、生徒や研修利用者の理解を深めやすくなります。今後の技術の進歩によってコスト面の課題が解消されれば、さらに普及が期待できる分野ではないでしょうか。
しかし、自社で教育・研修目的のVRコンテンツを作成するには、時間と手間、費用がかかります。質の高いVRコンテンツの制作のためにも、専門の会社に相談するのがおすすめです。
大平印刷株式会社では、動画の専門スタッフが目的や予算に合わせて絵コンテ作成から撮影、編集までワンストップで対応しています。360度撮影によるVRコンテンツやドローンを活用した映像など、用途に応じた動画を制作可能です。
「会社説明会・会社見学会の回数を増やしたい」と考えている企業の方々は、こうしたプロへの依頼を検討してみてはいかがでしょうか。