「メタバースは失敗した」と言われるのはなぜ?ビジネス現場で活用が続く理由とは
2023年7月13日
「最近、メタバースという言葉を以前ほど聞かなくなった」
そんな印象を持つ方もいるのではないでしょうか。
実際に、「メタバースは失敗した」、「結局流行らなかった」、「一時的なブームだった」といった声も見られます。しかし一方で、企業や自治体、教育機関では今も活用が進んでいます。では、なぜ「失敗した」と言われるのでしょうか。
メタバースについてはこちらもご覧ください。
▼メタバースとVRの違いは?意外と知らないそれぞれの役割
https://www.takara-sc.co.jp/column/3339/
▼文字や動画だけでは伝わらない?メタバースを活用した情報発信の可能性
https://www.takara-sc.co.jp/column/3348/

メタバースが失敗したといわれる主な理由
メタバースは「失敗する」という言葉とともに検索されるケースも多くみられます。
●実用性がないと思われている
メタバースは話題になったものの、「結局普及しなかったのでは?」というイメージを持たれることがあります。
実際に、過去には期待を集めながら広く定着しなかった仮想空間サービスも存在します。
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セカンドライフ
2003年に米カリフォルニア州サンフランシスコのリンデンラボ社が発表した仮想空間サービスです。利用者はアバターを介して仮想空間内で他者とコミュニケーションを取れるのはもちろん、稼いだ通貨を現実世界のお金に換金し、買い物や商品の販売はもちろん、不動産を取り扱うことも可能でした。メタバースの先駆者的存在でメディアや企業に注目されて発展し、一時は月間利用者が100万人を超えましたが、その後急速に衰退しました。日本でもブームになったものの、1年程で失速しています。
衰退原因は、主に当時の機器と通信環境にあったといわれています。セカンドライフを快適に利用するためには、当時としてはスペックの高いPCが必要でした。
さらに通信は光回線レベルのハイスピードなインターネット環境を要するため、基準を満たす利用者が限られていました。時代を先取りしすぎたサービスであったため、広く一般へ普及するには至りませんでした。 -
Meta
2021年10月にFacebookの最高経営責任者マーク・ザッカーバーグ氏が社名をmetaに変更し本格的にメタバース事業へ進出することを表明しました。
約1兆円超を投資し同年12月にメタバース対応のゲーム「Horizon Worlds」の提供を開始。「XRプログラム・研究基金」も設立し、政府や学術機関などへ2年間かけて投資しています。
しかし同社の株価は1年間で半分以上という大幅な減少を見せました。業績も悪化して多大な損失を計上しメタバース事業から撤退のうわさも報じられたほどです。莫大な投資の結果が出ているとは言い難い状況にあります。これを「失敗」ととらえる人もいます。とはいえ、ザッカーバーグ氏は長期的プランを見据えており事業継続を明言しています。収益が出る見通しを2030年以降としており、まだ結論付けるのは早計ともいえます。
●VR機器が普及していない
メタバースはパソコンやスマートフォンから利用できるサービスもありますが、没入感を高めるためにはVR機器が活用されることもあります。なかでもVRゴーグルはコミュニケーションの取りづらさの緩和に向いているとされています。しかしVR機器は「つけるのが億劫」「初期費用がかかる」といわれ、手軽にメタバースを始めづらい一因にもなっていました。近年はワイヤレスをはじめとする技術向上によって軽量化し解像度も改善されてきました。以前に比べ価格も下がりつつあり、商品価値の向上と相まって、より手に取りやすくなっています。
一方で、実際の活用分野は少しずつ広がっています。ゲーム分野はもちろんのこと、バーチャルオフィスやイベントといったビジネス、また、医療分野においても法人向け社員メンタルヘルス支援サービスも登場しました。アバターを介したコミュニケーションによって対面での会話に抵抗のある方も緊張が和らぎ、デリケートな相談もしやすいといわれています。

メタバースの普及状況
メタバースは一時期ほど話題になる機会は減りましたが、決して消えたわけではありません。むしろ現在は、「話題の技術」から「活用する技術」へと移行しつつある段階と言えるかもしれません。 企業や自治体、教育機関では、展示会やショールーム、教育・研修、観光プロモーション、行政サービスなどへの活用が進んでいます。一時期のようなブームは落ち着いたものの、実証実験の段階から実際の運用へ進む事例も増えています。一方で、一般消費者の間ではスマートフォンのように誰もが日常的に使うサービスにはまだなっていません。その背景には、VR機器の普及率がまだ低い、利用目的が限られている、コンテンツが発展途上といった課題があります。ただし、市場そのものは拡大を続けています。総務省の情報通信白書では、日本のメタバース市場は2026年度に6,710億円規模となり、2028年度には1兆8,700億円規模まで成長すると予測されています。
参考資料:情報通信分野の現状と課題
図表Ⅱ-1-7-5 日本のメタバース市場規模(売上高)の推移と予測
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r07/html/nd217520.html
メタバースはどのような分野で活用されている?
・ショッピング
ショッピング分野では、仮想空間上に店舗を再現する「バーチャルショップ」や、3D空間を活用したオンライン接客などの活用が進んでいます。利用者は店舗内を自由に移動しながら商品を確認できるため、写真や商品ページだけでは分かりにくいサイズ感や店舗の雰囲気を体験しながら買い物ができます。また、大型の商品や高額な商品など、実際に店舗へ足を運ぶ前に詳しく情報収集したい商品との相性も良いとされています。
・イベント・ライブ
イベントやライブ分野も、メタバース活用が広がっている領域の一つです。利用者はアバターとして参加し、会場内を移動しながらイベントを楽しめます。遠方で会場へ行けない人でも参加しやすく、リアルイベントとオンライン配信の中間のような新しい体験を提供できることが特徴です。
・教育、研修
教育分野では、時間や場所の制約を受けずに学習できる点が注目されています。アバターを通じてコミュニケーションを取りながら学習できるため、オンライン授業よりも参加しやすい場合があります。また、語学学習や職業訓練、企業研修などでは、実際の現場を再現した体験型学習も行われています。例えば、ホテルや空港といった実際の利用シーンを再現することで、座学だけでは学びにくい実践的なスキル習得につなげる取り組みも進んでいます。
・観光
観光分野では、観光地や施設を仮想空間上に再現する取り組みが広がっています。利用者は現地を歩くような感覚で観光スポットを巡ることができ、旅行前の情報収集や地域の魅力発信にも活用されています。また、距離や時間の制約によって現地訪問が難しい人にも、観光体験の機会を提供できることが特徴です。
・ビジネス
ビジネス分野では、会議や研修、展示会、ショールームなどに活用されています。メタバース上のオフィスでアバターとして参加することで、オンライン会議だけでは伝わりにくい空間共有が可能になります。また近年では、コミュニケーションそのものよりも、商品の魅力や施設の雰囲気など、文字や写真だけでは伝えにくい情報を届ける手段として活用されるケースが増えています。
メタバースは「失敗した」と言われることもあります。
しかし実際には、ゲームや教育、観光、ショッピング、ビジネスなどさまざまな分野で活用が進んでいます。一時的なブームが落ち着いた今だからこそ、「メタバースを作ること」ではなく、「どのような体験を届けたいのか」が重要になっています。
文字や写真、動画だけでは伝わりにくい情報を届ける手段として、自社に合った活用方法を考えてみてもよいかもしれません。